医療人として。
本来、我々が取得すべきは「医療人」としての資格なのかもしれない。
「たしかに、薬剤師の免許を取得すれば、医師が作成した処方箋に基づく、
医薬品を調剤、供給することができるようになる。これはこれで、とても意義のあることだと思うし、薬剤師になる道のりも楽ではない。でも決して忘れてはいけないのは、薬剤師である前に医療人であること。これ、凄く大切なことだと思うんだ」。
そう語ってくれたのは、有限会社つくも薬局の下妻社長。
続けて、「もちろん、調剤薬局はボランティア団体ではないから、稼がないといけない。だからといって、金儲け主義に走る経営者にはなりたくない。本来、医療は人の役に立ってなんぼだから・・・」。
社名は「九十九(つくも)」、由来は100歳を超えた人でも、
その元気な生活を支えられる会社になろうという想いから。
いわずもがな、薬剤師の仕事は素晴らしい。
しかし、薬の知識だけで貢献できることは限られている。
一般的な薬剤師の枠を飛び越えた「+α」のサービスを提供できたとき。
それは、医療人として誇れる薬剤師になれたときなのだと思う。
「人工肛門の取扱NO.1」から「地域の調剤薬局NO.1」を目指すようになった理由
薬学部に入学したのは、好きな化学を活かして入学できる学部だったからだし、初めての就職が、街の薬屋さんになったのも突発的に発生した不景気(オイルショック)の煽りを受けて病院の内定が取り消しになったから。
そんな僕に、ミニドラッグストアを経営している先輩から転職を誘われた。
これが、転機となる。
数年後、僕は栃木県で一番人口肛門に詳しく、一番販売する人になっていた。
人工肛門の普及が進むと、次第に海外製品も多くなり患者さんも男女問わず
多様化していくと同時に、想像以上に人と製品の相性があった。
快適に生活してもらいたい一心で勉強を重ねていたら、そのうち病院の先生達が、
人工肛門のことは「下妻」って薦めてくれるようになって、気づいたら500人近くの
患者さんの相談に乗った。
多くの患者さんと接し、沢山感謝の言葉を頂いたことで、
もっと患者さんの役に立ちたい。もっと多くの製品や薬を扱いたいって・・・。
いまは、地域で一番の調剤薬局になりたい。なくては困る薬局になりたいって思っている。
選ばれることより大切なこと
なくてはならない薬局というのは、患者さんに選ばれる薬局といった
イメージでしょうか?
この質問に、下妻社長が熱っぽく答える。
選ばれるという表現は、とてもイメージとしては近いですね。でも目指しているのは選ばれるのではなく応援される調剤薬局。その方が、ニュアンスとしては合っています。
なるほど。では応援される調剤薬局になるためにはどうすればよいとお考えですか?
なにも突飛なことをしようとしているわけではないです。
当然ながら、薬剤師として薬に対する知識があることは重要ですが、
お客さまは、知識の存在以上に薬があるということ自体が重要だったりします。
だからまずは、沢山の薬が用意されていること。
そして、訪問されたお客様が不安にならない接客ができるというシンプルなこと。
まあ、シンプルを突き詰めるのは、とても難しいことだとは思いますが・・。
「そうだ、あなただったらどんな調剤薬局を応援したくなる?」
そう微笑む表情から、強いこだわりが顔を覗かせていた。
そんな人だらけのつくも薬局でありたい
働く準備から出勤して実際に働く時間を換算すると1日の半分くらいを
仕事で費やすことになる。
これは、一生で考えると莫大な時間だし、起きている時間だけをとって考えたら、
きっと家族と過ごす時間より多いくらいですよね。
だから一緒に働く人に、可能な限りストレスを感じて働いてもらいたくないなって
思います。できれば、ストレスをあまり感じないで仕事ができる人が理想ですね。
ちなみに感じないというのは、「鈍感である」とか「耐える力がある」とか、
そういうことではなく、そもそも「つくも薬局での仕事が合っている」ということ。
つくも薬局の仕事は、考える事。
スタッフひとりひとりの個性や置かれている状況が違うのと同様、
お客様も個性があり、状況も異なります。
そんな相手にとってのベストとはなにか?を考えることが求められるので、
お客様ひとりひとりのことを考えるのが、好きな人であればストレスにならない。
むしろ、ワクワクして仕事が楽しく感じられるようになると思うのです。
そんな人だらけのつくも薬局でありたいですね。
誰もスタープレイヤーにはなれない会社
6年間勉強して、やっと国家資格を取得する。
見る人が見たら怒るかもしれないけど、一般の学生に比べたら沢山我慢をしてきたと思うので、つまらない仕事をさせない職場でありたいと考えています。
例えば、ワンパターンでルーティーンな仕事ばかりの職場にはしたくない。
実は、薬剤師の資格を取得するまでの人生より、資格を取得した後の方が長いし、
得る知識も多い。知らない薬に出会って、勉強して、知識を増やして・・・。
この繰り返しが、一人前の薬剤師を育てると思うし、一人前の医療人を育てると思う。
だから、多彩な変化が味わえてみんなが、その変化に対応しようといつも努力している
くらいが丁度いい。
そういう意味では、現在のスタッフは、真面目で誠実、協調性があって・・・
と少し褒め過ぎかな?
でも、誰か一人だけが吐出しているチームではなく、
みんなが吐出しているチームでありたい。
だから、スタープレイヤーなんていらない。
誰もがスタープレイヤーレベルだから誰もスタープレイヤーになれない。
そんな調剤薬局なら、たくさんのファンに応援されると思いませんか?