未来に輝く、新しい薬局の誕生
未来に輝く、新しい薬局の誕生
東京都府中市を中心に12店舗を構える田辺薬品株式会社。
一見カフェのような、八百屋のような薬局から、
可愛らしいトレードマークの“たなぽん”が顔を出す薬局まで。
その店舗の色はさまざまである。
田辺薬品は、創業83年を迎える2020年に大きなターニングポイントを迎えることとなった。
社長交代である。
父から継承し、2020年4月に社長に就任したのが田辺正道。
彼は、社長に就任するその時まで、薬局業界に携わることなく人生を歩んできた。
大学では経営工学や経済学、社会学を学んだ。
卒業してからは大手ITメーカーで23年間、キャリアを積んできた。
経営企画や研究戦略から、誰もが知っている大手コンビニやドラックストア、百貨店などのソリューション開発まで。
IT業界での仕事は、昨今AIが登場してからというもの、仕事の面白さがピークに達する頃だったという。
そんな彼が、どうしてIT業界を離れて薬局を継ぐことに?
「自分自身は全く継ぐ気はなかったんですけどね…。」
田辺薬品は10店舗を構える薬局。
今後も店舗を拡大させ、より地域の皆様に寄り添う存在になっていきたい。
加えて薬局業界が大きく舵を切ろうとしている今、しっかり“1つの強い組織”をつくるためには自分の力が必要だと思った。
「社長になるにあたって、一文無しになること覚悟でしたよ(笑)。」
田辺社長は笑って答える。
変わりつつある薬局業界、23年間IT業界にいた新社長―
そんな彼が見る、薬局業界とは?創り出す薬局とは―?
薬局業界は、大人しい
これまで長くIT業界にいた田辺社長は、薬局業界を「大人しい」と表した。
対物から対人へ
平成27年に厚生労働省が発表した「患者のための薬局ビジョン」で示された言葉である。
「このビジョン、5年も前に発表されたんですよ。でも、未だにずっと言い続けている。
5年間という期間があれば、IT業界はトレンドも主軸も全く違うものになります。
業界の主軸が変わると生きていけなくなる世界で生きてきたので、そういった意味では、薬局業界はまだ変化に対しては大人しいのかなと思いますね。」
これからの薬局業界を考えてみよう。
オンラインでの処方箋受付や服薬指導が盛んになってくる今後、
薬局が向き合わなければならないのは、事業構造、産業構造の変化である。
「だって、考えてみてくださいよ。
例えば、子育て中のママ。
そりゃあ子供が熱を出したら病院へ行って薬局で丁寧に説明を聞いて薬をもらうと思いますよ。
でも、自分がちょっと風邪を引いたくらいだったら、オンラインの方が絶対に楽。
こういう業界の変化で救われる人が少なからずいるんですよね。
でも、薬局業界はその“変化”に対しての恐怖心が少し強いのかもしれない。
だからこそ、前向きに変わっていけるような薬局でありたいなと感じるんです。」
在宅×ヘルスケアの推進
業界の構図が変化していく。
世の中は急速なデジタル化が進んでいるのだ。
デジタル化によって、出版業界の構図が大きく変わったのは誰もがご存じであろう。
電子書籍が普及したり、オンラインで書籍の購入ができるようになったり。
手軽に書籍を手にすることができるようになった一方で、その影響を被ったのが、小さな本屋さんであった。
少し残酷な話になるが、それぞれの本屋で、どんなコンセプトを掲げても、内装をいくら工夫しても、
買う“本”そのものは、どこで買っても同じだ。
だから、世の中が急速なデジタル化に向かって進んだ時、
夜中まで営業していたり、在庫が揃っているような大きな本屋が強くなっている。
では、調剤薬局は?
処方箋を持っていれば、もらえる薬はどこでも同じだ。
対物から対人へ
このビジョンはもちろん、体現すべきものだ。
しかし、薬局にいくら“心”があっても、そんなに甘い世界という訳ではない。
どんな時代になったとしても、しっかりと価値を出せる薬局でないと意味がないのだ。
では、デジタル化が進む中でも、需要として残り続ける“リアル”な場面において
薬局が提供するべき価値とはなんだろう?
田辺薬品が出した答えは、「在宅×ヘルスケア」。
いくらデジタル化が進んでも、現場でのサポートを求めている人はたくさんいる。
外傷を負い外出が難しい人や、自宅で寝たきりのご老人…。
そんな人々に寄り添い価値を出すための「在宅」。
そして、薬局は身体が不調を起こした時だけに利用する存在に留まっているべきではないと思う。
日常生活の健康をしっかりと維持していくことを
薬局を通じて感じてほしいという想いから、「ヘルスケア」。
田辺薬品は、この「在宅×ヘルスケア」の推進によって
デジタル化が進む中においても薬局としての価値を出し続けていく。
“寄り添い脳”の薬剤師が輝ける仕組み ミッションステートメント
これまでと全く違う業界に飛び込んだからこそ分かった、 働く上での“脳みそ”の違いについて語ってくれた
「いわゆるビジネスマンは、論理的に整理していく仕事の仕方をすると思うんですけど、
医療業界の人って、そうではなくて“寄り添い脳”があるなと。
“その人”を俯瞰して全体を見た上で寄り添う能力を持っているなと感じました。
そういう人達は、僕からしたら神様なんです。僕はそれができないから。」
なるほど、“寄り添い脳”…。
田辺社長曰く、寄り添い脳はやろうと思ってできるものではないらしい。
医療業界にはそれを自然とやりこなしてしまう人が多くいるのだそう。
「だから、僕は自分なんかが主役になろうなんてこれっぽっちも思っていなくて。
寄り添い脳を持って、きちんと寄り添ったものの見方ができるような
それに沿った行動ができるような人をいかに輝かせることができるか、
その仕組みをいかにつくることができるか。
それが僕の仕事だと思うんです。」
その取り組みの一つとして田辺社長が社長に就任して掲げたことが、
ミッションステートメントだ。
ミッションステートメント、ご存じだろうか?
一般的には、以下のように説明される。
企業とその企業で働く従業員が、共有すべき価値観や行動に関する指針や方針のこと
つまり、田辺薬品が大切にしたい価値観や行動のことである。
“寄り添い脳”を持った薬剤師一人ひとりが輝けるように 輝かせることのできるように
田辺薬品が掲げたミッションステートメントは、
カラダとココロに役立つ『おクスリ』を丁寧にお届けする
薬局は、もっと人々にとって色んなことができるはず。
薬を出すだけじゃない、様々な価値が提供できるはず。
このミッションステートメントにある『おクスリ』とは、
一般的に言う薬剤のことではなく、
人々のカラダとココロに役立つ取り組み全てを含めて『おクスリ』。
ただ薬を出すだけじゃない。
薬局が価値をもっと広げていくための指針があった。
日本一の薬局をつくりたいあなたへ
皆さんはなぜ今、薬学を勉強しているのだろうか?
薬剤師は安定しているから?親が薬剤師だから?
「個々に様々な背景や想いはあるだろうけど、最終的に大変な仕事を自ら選んだのは、
『人を幸せにしたい』という想いがあったからだと思うんです。
その思いがあるんだとしたら、自分が持っている想いと、会社が大切にしたい想いがどれだけ重なっているかって大事だと思う。」
“地域の幸せを支えたい”と思っている人、どんな形で地域を支えたい?
自分が支えたい地域の幸せって何なのか?
「学生のうちは難しくても、一緒に働く中でそれを明確にしていきたい。
言葉にすることができたら、実現したいことが見えてくるはずだから、
それを全力で応援する、そんな会社をつくっていきたいと思っています。
皆が持っている想いを明確にして、応援して、実現させるのが僕らの仕事。
でもその代わり、皆には真剣に取り組んで欲しいですね。
日本一の薬局をつくりたいなら、その想いはうちで叶えられると思います。」